趙・ヨンギ師　礼拝礼拝メッセージ

「葛藤、そして赦しと愛」

■聖書箇所

「マタイの福音書 18章21節～35節」
18:21 そのとき、ペテロがみもとに来て言った。「主よ。兄弟が私に対して罪を犯したばあい、何度まで赦すべきでしょうか。七度まででしょうか。」
18:22 イエスは言われた。「七度まで、などとはわたしは言いません。七度を七十倍するまでと言います。
18:23 このことから、天の御国は、地上の王にたとえることができます。王はそのしもべたちと清算をしたいと思った。
18:24 清算が始まると、まず一万タラントの借りのあるしもべが、王のところに連れて来られた。
18:25 しかし、彼は返済することができなかったので、その主人は彼に、自分も妻子も持ち物全部も売って返済するように命じた。
18:26 それで、このしもべは、主人の前にひれ伏して、『どうかご猶予ください。そうすれば全部お払いいたします。』と言った。
18:27 しもべの主人は、かわいそうに思って、彼を赦し、借金を免除してやった。
18:28 ところが、そのしもべは、出て行くと、同じしもべ仲間で、彼から百デナリの借りのある者に出会った。彼はその人をつかまえ、首を絞めて、『借金を返せ。』と言った。
18:29 彼の仲間は、ひれ伏して、『もう少し待ってくれ。そうしたら返すから。』と言って頼んだ。
18:30 しかし彼は承知せず、連れて行って、借金を返すまで牢に投げ入れた。
18:31 彼の仲間たちは事の成り行きを見て、非常に悲しみ、行って、その一部始終を主人に話した。
18:32 そこで、主人は彼を呼びつけて言った。『悪いやつだ。おまえがあんなに頼んだからこそ借金全部を赦してやったのだ。
18:33 私がおまえをあわれんでやったように、おまえも仲間をあわれんでやるべきではないか。』
18:34 こうして、主人は怒って、借金を全部返すまで、彼を獄吏に引き渡した。
18:35 あなたがたもそれぞれ、心から兄弟を赦さないなら、天のわたしの父も、あなたがたに、このようになさるのです。」

今は、葛藤の世の中だと言えます。私たちの社会の現実を見ますと、政治、経済、社会、文化...等、生活全般にわたって葛藤が露出しています。大きな社会問題として台頭した青少年問題も、葛藤の姿を呈しています。一歩近づいて行って私たちの家庭生活を覗いて見ても、葛藤と苦痛が存在しており、私たち自身の内面的暮らしを覗いて見ても、自分が自身に対する葛藤でたくさんの苦痛を抱いて暮らしております。

この葛藤問題を、何処から、どのように解決して行くべきでしょうか？葛藤問題を解決せずには、「平安」「幸福」「喜び」などは無意味な単語に過ぎません。

第一、葛藤は何処から始まったのでしょうか？

葛藤は、エデンの園から始まりました。エデンの園での神様と人間との睦まじさが崩れてから、葛藤が始まったのです。

神様は、人を神様ご自身に似るように、ご自身のかたちに造られて、彼らを傷も害もないまことに麗しい楽園エデンに置かれました。そして、アダムとエバが神様を信じて、従順に聞き従うとき、彼らには神様の愛と平安と幸福が満ち溢れました。

ところが、アダムとエバが、食べてはならないと神様が言われた「善悪の知識の木の実」を取って食べ、彼ら自らが神様から独立しようとし、神様のようになって神様と競争しようとした時、神様と人との間に深い溝が掘り下げられ、葛藤が生じました。それで神様は、アダムとエバを審くしかありませんでした。

愛と公義の神様が、アダムとエバの罪を審くしかないようになるや、神様の御心の葛藤が如何ほどであったでしょうか？神様は、愛しようとしてアダムとエバを造られたのに憎まなければならなくなり、祝福して上げようとして彼らを造られたのに審かなければならなくなったのですから、神様の御心の中の、アダムとエバによる葛藤は形容し得ないものであった筈です。

神様は、人類を救おうとしてアブラハムを選ばれて、イスラエルの民をエジプトに送られ、選民とされて、神様のみわざを起こそうとして430年間訓練させました。そしてモーセを遣わして、イスラエルの民を導き出し、乳と蜜が流れるカナンの地に連れて行かれ、祭司長の国にして、世の中をもう一度、神様の懐に導こうとなさいました。ところが、モーセに従って出て来たイスラエルの民が広野で、神様に抵抗し、不従順を犯し、不信仰したので、神様との間に絶え間ない葛藤が起こりました。

広野で、神様は彼らを愛しようとしました。祝福して上げようとなさいました。顧みて上げようとなさいました。しかし、彼らの不信仰、不従順、偶像崇拝、不平、怨み…等々で憎むしかなく、審くしかなく、鞭打つしかありませんでした。それで神様は、深い葛藤の中に立たれました。

その上に、イスラエルの民たちは、カナンの地を40日40夜偵察して帰って来てから、神様の御心とは正反対の報告をしました。「その地に住む民は力強く、その町々は城壁を持ち、私たちが探って来た地は、その住民を食い尽くす地だ。私たちがそこで見た民は皆、背の高い者たちで、私たちには自分がいなごのように見えました。」このように報告してから、「一人の頭（かしら）を立ててエジプトに帰ろう。」と主張しました。

神様は、カナンの地を偵察して帰って来た12人の偵察隊員のうち、ひどく悪く言いふらした10人を疫病で殺し、すべてのイスラエルの民たちを、乳と蜜が流れるカナンの地に導くかわりに、荒野に向きを変えさせて、40年間そこに住みながら、彼らがみな滅びるまで待たれたのですから、神様の御心の葛藤はどんなものであったでしょうか？

又、カナンの地に入って来たイスラエルの民たちも、絶え間なく神様に葛藤の要素となりました。彼らはカナンの地に入って来てからも、継続して不信仰、不従順、偶像崇拝…諸々の悪を行って、神様の御心に激しい憤怒と大きな痛みをもたらしました。

「士師記 2章11節～12節」には、『それで、イスラエル人は主の目の前に悪を行ない、バアルに仕えた。彼らは、エジプトの地から自分たちを連れ出した父祖の神、主を捨てて、ほかの神々、彼らの回りにいる国々の民の神々に従い、それらを拝み、主を怒らせた。』と記されてあり、「士師記 2章14節～15節」には、『主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がり、主は彼らを略奪者の手に渡して、彼らを略奪させた。主は回りの敵の手に彼らを売り渡した。それで、彼らはもはや、敵の前に立ち向かうことができなかった。彼らがどこへ出て行っても、主の手が彼らにわざわいをもたらした。主が告げ、主が彼らに誓われたとおりであった。それで、彼らは非常に苦しんだ。』と記されています。

神様は、人類の先祖アダムとエバとの間でだけ葛藤を持たれたのではなく、神様の選民イスラエルとも絶え間ない、深い葛藤の中におられました。私たちの神様は、人類に対しても、選民に対しても、葛藤問題を解決しなければなりませんでした。

神様は、この葛藤問題を解決するために、今から二千年前にひとり子イエス・キリストをこの世に遣わされました。私たちが葛藤の問題を解決するためには、葛藤をもたらした原因を審き、その後に、赦しと愛で和解させて一つとならしめる神様の道以外には、他に方法がありません。

第二、葛藤の原因と、解決策イエス・キリスト

葛藤の原因は、人間の反逆罪です。聖書は、「罪から来る報酬は死である」と言われました。神様が人類の罪をすべて審いてしまったら、人類は一人残らずみな滅亡し、地獄に行くしかなかったでしょう。それで、神様は葛藤の原因である罪を審き、人類に対する赦しと愛をほどこそうとして、その御子イエス・キリストを人の体にして遣わされました。そして人に代わって、反逆した罪の恐ろしい神様の審きを受けるようになさり、その審きを通して、人間の罪を赦し、人間を愛し、人間を懐（ふところ）に抱いて上げようと、偉大なみわざを計画なさいました。

「ヨハネの手紙第一 2章 2節」には、『この方こそ、私たちの罪のための、―私たちの罪だけでなく全世界のための、―なだめの供え物なのです。』と記されています。十字架の上のイエス様をご覧ください。その十字架自体が葛藤です。その葛藤の十字架にイエス様が釘付けられました。神様が人となって来られて、神様に反逆した罪の代価を全身に背負われ、十字架に釘付けられて死なれてから、三日目に蘇(よみがえ)られました。

十字架の救いのメッセージは、神様が人類の罪を人類に問う代わりに、イエス様を審く事によって人類との葛藤を解消し、そのイエス・キリストを通して人類に神様の「赦し」と「愛」と「和解」の霊を注いで上げて、葛藤問題を解消しようと願われる、と言う事を見せてくれるものです。

「ヨハネの手紙第一 4章10節」を見ますと、『私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛し、私たちの罪のために、なだめの供え物としての御子を遣わされました。ここに愛があるのです。』と記録されています。

イエス・キリストを通さない事には、神様と人との間の葛藤問題は解決する事ができません。罪は審かなければなりません。しかし人間は、審きに堪え得る程の力を持っていません。それで、まことの神様がまことの人として来られて、私たちに代わって審きを受けられ、それを通して神様が赦して下さり、愛をほどこして下さり、人類と和解なさって、一つとなるようにして下さったのです。

神様と人との間にだけ、葛藤があるのではありません。自分自身の内的葛藤も、お隣りとの間のそれも深刻なものです。自分では、愛さなければならないと思うのですが、心の一方に憎しみがあります。自分の夫、自分の妻を愛さなければならないと思うのですが、その心の一方に憎しみがあります。子供を愛さなければと思うのですが、一方には憎む心があり、父母を愛さなければならないと思いながらも、父母を憎みます。私たちが皆、胸の中のこのような隠れた葛藤によって、苦しみ悩んでおります。

そして、祝福と嫉妬の葛藤があります。お隣りが幸運に巡り会ったら祝福しなければなりませんが、口では祝福しながらも一方、心の中では妬みます。このように、私たちの心の中には葛藤があります。喜びと悲しみ、希望と絶望の葛藤があります。明日に対する大きな希望を持とうと努力しますが、また一方の現実には多くの絶望があります。

また、肯定と否定の葛藤があります。神様を信じ、すべてを明るく、はっきりと、自信を持って期待しなさいと言われていますが、実際には、暗く、漠然として、期待が持てず、「私は駄目だ。出来ない。見込みがない。死にたい…。」と言った否定的考えが胸の中で波打ちます。

「ローマ人への手紙 7章18節～24節」には、『私は、私のうち、すなわち、私の肉のうちに善が住んでいないのを知っています。私には善をしたいという願いがいつもあるのに、それを実行することがないからです。私は、自分でしたいと思う善を行なわないで、かえって、したくない悪を行なっています。もし私が自分でしたくないことをしているのであれば、それを行なっているのは、もはや私ではなくて、私のうちに住む罪です。そういうわけで、私は、善をしたいと願っているのですが、その私に悪が宿っているという原理を見いだすのです。すなわち、私は、内なる人としては、神の律法を喜んでいるのに、私のからだの中には異なった律法があって、それが私の心の律法に対して戦いをいどみ、私を、からだの中にある罪の律法のとりこにしているのを見いだすのです。私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか。』と記されています。

使徒パウロの嘆きは私たちの嘆きであり、使徒パウロの葛藤は私たちの葛藤です。しかし、イエス様の十字架を通して、自分自身を審き、自分自身を赦し、自分を抱き寄せて愛し、自分自身と和解したら、自分自身の内的葛藤に打ち勝つ事ができます。その他には道がありません。イエス様が私の為に、私に代わって、十字架に釘付けられ、私の罪をすべて贖って下さったのだから、そのキリストの為に自分を赦し、そのキリストの為に自分を愛し、そのキリストの為に自分自身と和解し…、そうしたら、イエス様にあって心の中の葛藤が消え去り、心が安らかに統一され、ついには平和を得る事ができるようになります。

お隣りとの間の葛藤、父母と子…夫婦間の葛藤も同様です。キリストの愛と赦しを互いに実践する時、すべての葛藤を解決することができるのです。

第三、赦しと愛の実践

葛藤問題は、赦して上げ、愛を持って抱いて上げる道以外には、解消する方法がありません。相手の罪がイエス様を通して審かれた事を見詰めて、赦して上げ、愛して上げるように心を入れ替え、そして口で是認しなければなりません。十字架の為に、イエス様のために赦して上げたら、そして愛して上げたら、葛藤問題を解決することができるのです。

「ルカの福音書 6章27節～28節」に、『しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行ないなさい。あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。』と記されてあり、「マタイの福音書 6章12節」には、『私たちの負いめをお赦しください。私たちも、私たちに負いめのある人たちを赦しました。』と祈るように、主が諭しておられます。イエス様に拠り頼まないことには、私たちの力でお隣りを赦し、愛し、和解することはできません。

ある日、ペテロが主の前に来て、「主よ。兄弟が私に対して罪を犯した場合、何度まで赦すべきでしょうか？七度まででしょうか？」と質問しました。イエス様は、『七度まで、などとはわたしは言いません。七度を七十倍するまでと言います。』と言われました。これは、限度なく赦しなさいと言うことです。

また、「マタイの福音書 18章23節～35節」を見ると、赦しに対する教訓的御言葉が記録されています。

ある日、王がその僕（しもべ）たちと清算をする時、一万タラントの債務者が連れて来られました。しかし、その人は返済する事ができなかったので、王はその人に、自分も妻子も持ち物全部までも売って返済するように命じました。この僕は主人の前にひれ伏して、「どうかご猶予下さい。そうすれば全部お払い致します。」と乞い願いました。王はかわいそうに思って、彼を赦し、借金を免除してやりました。

ところが、その僕は出て行くと、自分に百デナリの借金がある同じ僕（しもべ）仲間に出会い、その人の首を絞めながら「借金を返せ。」と強要しました。彼の仲間はひれ伏して「もう少し待ってくれ。返すから。」と頼みましたが、彼は聞き入れず、連れて行って、借金を返すまで牢に投げ入れました。彼の仲間たちが事の成り行きを見て、その一部始終を主人に告げました。

「一デナリ」は、労働者の一日の賃金に相当します。「一万タラント」に比べれば、何でもありません。聖書は、『そこで、主人は彼を呼びつけて言った。「悪いやつだ。おまえがあんなに頼んだからこそ借金全部を赦してやったのだ。私がおまえをあわれんでやったように、おまえも仲間をあわれんでやるべきではないか。」こうして、主人は怒って、借金を全部返すまで、彼を獄吏に引き渡した。』（マタイの福音書 18章32節～33節）と記録しています。

この譬え話が与える教訓は、私たちがイエス様を通してとてつもないお赦しを頂いていながら、その私たちがお隣りを赦さないなら、そのような人は神様が罰すると言うことです。私たちが神様から赦しを得たのに、自分たちはお隣りを赦さないなら、父なる神様が私たちを監獄に投げ入れられます。疾病の監獄、経済的苦痛の監獄、試練と患難の監獄に私たちを投げ入れられます。神様が、主の愛を悟るように私たちを懲らしめられるのです。

聖書は、『あなたがたもそれぞれ、心から兄弟を赦さないなら、天のわたしの父も、あなたがたに、このようになさるのです。』(マタイの福音書 18章35節)と記しています。「エペソ人への手紙 4章32節」には、『お互いに親切にし、心の優しい人となり、神がキリストにおいてあなたがたを赦してくださったように、互いに赦し合いなさい。』と記されています。

人間の生活は限りなく不完全であり、この不完全が為に葛藤と苦痛が絶えません。完全な人がどこにいるでしょうか？自分も不完全でありながら、自分自身も内的葛藤で苦しんでいながら、どこの誰に完全を要求することができるでしょうか？

それにも拘わらず、人間が破滅せずに継続して暮らして行けるのは、赦しと愛と和解があるからなのです。赦しと愛と和解を実践しない個人と家庭と集団は、この社会と歴史から消え去ってしまいます。赦しと愛と和解がない家庭は離婚するようになり、破壊されます。赦しと愛と和解を実践しない社会は、滅びます。

　完全ではあるが、赦しと愛と和解を継続して実践する「人」と「社会」と「国家」は発展し、栄えます。こんにち、私たちがこの地上で不完全な暮らしをしながらも存在することができるのは、赦しと愛と和解をさせて下さる主がおられるからです。自然をご覧ください。戦争が起こって山川草木が全部焼き払われても、自然はそれを赦して、次の年には再び草が生え、花が咲き、実を結ぶようにしてくれます。天災地変が起こって自然が破壊されても、自然はそれを赦し、愛を持って再度草を生えさせ、花を咲かせて、暮らして行ける住まいに変化させてくれます。赦しと愛と和解、これは私たちを生かす力となるのです。

そして、赦し、愛し、和解することができる偉大な道は、十字架のイエス様を信じ、拠り頼む以外には、ほかに道がありません。神様がイエス・キリストの十字架を通して、神様の前に犯した私たちのすべての罪を赦して下さり、人との間に犯した私たちの罪をすべて赦して下さいました。イエス様が、[罪の為のいけにえ]「罪過の為のいけにえ」「全焼のいけにえ」になられて、体を裂き、血を流して赦しをもたらし、それによって神様の愛が私たちに注がれて、それを通して神様と人が和解し、人と人が和解して一つとなるように、神様がして下さったのです。イエス・キリストの十字架を通して、この赦しと愛と和解の驚くべき力、聖霊様のみわざが私たちに満ち溢れているのです。

お祈り

聖く、愛であられる、我が父なる神様。この世は悪魔と罪の為に葛藤が絶えません。エデンの園から既に、人間と神様との間の葛藤の溝が深くなって、神様も葛藤を覚えられ、人間も葛藤のために悶え苦しみ血まみれになりました。

しかし、この葛藤を解消するために神様が人となって来られ、葛藤をすべてご自分の身に引き受けられて、赦しの扉を開いて置かれ、愛と和解の扉、皆が一つとなれる扉を開いて置かれました。主であられる神様! イエス・キリストを通した赦しと愛と和解のこの道だけが、私たち個人が生き、私たちの家庭が生き、私たちの社会が、国家が、世界が生きる道です。

天のお父様！私たちを赦し、愛し、そして私たちと和解して下さって、私たちが生きて行くべきまことの道を択ぶことができるように助けて下さい。イエス様の御名によってお祈り申し上げます。アーメン！